映画「開戦前夜」製作委員会の声明について
映画「開戦前夜」製作委員会(以下「製作委員会」という)は12月25日、インターネット上の声明により、映画の製作と公開を発表しました。
製作委員会は声明において、「2025年8月に放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」(前後編計98分)のテーマをより深くお伝えすべく、約139分の完全版として2026年以降に劇場公開」するとしています。
私、飯村豊は作品のモデルとなっている飯村穣の孫に当たりますが、祖父の人物像が誤った描写でゆがめられ、死者の名誉が毀損され、遺族の敬愛追慕の感情が著しく侵害されたとの理由で、NHK及び製作委員会を構成する4社及び脚本執筆、演出を担当した石井裕也監督らを被告として、550万円の損害賠償請求訴訟を12月24日、東京地裁に提起しました。
その翌日に当たる12月25日、NHKスペシャルのドラマパートをさらに41分も拡大した映画化の発表がされ、驚愕、困惑するともに、この映画の公開中止を強く求めます。
理由は以下の3点です。
第1 飯村穣所長の「講評」への言及について
製作委員会声明は、原案となった猪瀬直樹氏の著作において、飯村所長の研究生報告への「講評」が研究生らを憤慨させたとのくだりがあったことをもって、ドラマ製作の契機としています。
しかしながら声明自身が触れているように、「講評」の歴史的評価には諸説があります。また、この「講評」の起草者は明らかでなく、どのように研究生たちに伝えられたかも定かではありません。一方で猪瀬氏の著作は「演習中、模擬内閣の結論を押さえ込もうという素振りが飯村所長になかった」、「研究所ですっかり人気者になっていた飯村所長」、「所長は押さえるべき所は押さえていた」とも述べています。「講評」の存在という著作の一部のくだりに依存して板倉少将を実在のモデルと真逆に描くことは、正当化されません。
このような甚だしく片寄った姿勢で上映時間が41分も拡大されれば、祖父と私への人権侵害がいっそう拡大することは明らかです。
第2 上映時間拡大への懸念
映画は、ドラマより41分も長く拡大されます。製作委員会加盟各社と私との事前交渉で、これほどの長時間にわたる上映時間拡大については言及がなく、公開発表前の告知もありませんでした。これは交渉の信義則に著しく反するものです。
加えて拡大される41分の中に、劇中人物板倉少将の暴力、脅迫、研究生の不当な排除等の「悪行」が描かれ、そのことが飯村穣の名誉毀損を拡大し、私の敬愛追慕の情に対する侵害を、一層増幅させるのでないかとの懸念があります。
第3 NHKの責任
この映画は、私が提訴したNHKスペシャルのドラマが基軸になっていることは、製作委員会声明からも明らかです。しかるにNHKは、報道によれば製作委員会に加わっておらず、映画の公開について何らの所見も発表しておりません。
映画は、総力戦研究所所長を務めた飯村穣をモデルとした板倉少将を準主人公としており、上映公開されれば、著作権の使用を許諾したと考えられるNHKの法的、社会的責任は一層拡大するのですから、映画についての所見を明らかにすべきです。この「雲隠れ」とも言うべきNHKの姿勢は、強い批判の対象となるべきものです。
さらに言えば、製作委員会にはNHKが完全な支配力をもつNHKエンタープライズが加入しているのですから、親会社としてのNHKの責任も加重されるものであることを指摘しておきます。
名誉毀損に対する責任の所在が曖昧なままの映画の公開決定には、強く抗議します。
私は、以上の理由から、NHKと製作委員会に対し、映画「開戦前夜」の上映中止を強く要求します。
心あるみなさまにこの問題への関心を強めていただき、NHKと製作委員会への批判を高めていただきますよう訴えます。
2025年12月27日
飯村豊
