top of page
製作委員会からのメッセージ(6/12)に対する反論

 この度、わたくし飯村豊は「総力戦研究所の真実 ―歴史の法廷に立つNHK」を上梓しました。この本の中で、初代総力戦研究所長・飯村穣を卑劣な人間として描いたNHKと映画監督石井裕也さんの制作姿勢を告発し、史実歪曲ドラマがどのようにつくられたか、私の見方を述べました。

 

 出版の翌々日12日に、製作委員会は「(私の考えや行動が)一方的な見解に基づくものであり、断じて受け入れることはできません」とのメッセージを自らのホームページに掲載しました。

 それによると、「登場人物が原告の祖父であると同定されないよう、複数回にわたり原告との間で対策について協議を重ねたうえで、フィクションであることの明示や誤解防止のための表示・説明など、必要な対応を行ってまいりました」となっています。

 残念ながら、昨年夏放送直前にNHK側と何回か協議があったものの、私が要請した脚本開示もしくは何らかの形で番組組内容を示していただけないまま、①ドラマ冒頭のテロップ表記、②ドキュメンタリー部分での恣意的な編集でつくられた私のインタビュー挿入といった“小手先”ともいうべき対応をもって放送を行ったのであります。

 番組の中身自体はすでに完成済みということで、全く変更しない一方、番組の性格は「猪瀬直樹のノンフィクション『昭和16年夏の敗戦』を原案に」、「実話に基づくドラマ」というのが昨年7月16日付NHKホームページの謳い文句でしたが、今回のメッセージでは「歴史的事実に着想を得たフィクション」とし、フィクションであることを前面に出しており、番組の性格の定義に関する製作者自身の考えは変化してきています。しかし、宣伝文句は代わるものの、中身は変わっていないのです。これでは、視聴者・観客にとってこの作品がいったいフィクションなのか、ノンフィクションなのか、はっきりと理解することは難しいでしょう。

 また、「映画版においても、誤解を避けるための措置を講じております」としていますが、映画関係者との話し合いが2回行われたものの、最終的にどのような措置を講じられたかいっさい知らされていません。

 他方、劇中人物の東條元首相のひ孫の東條英利さんは映画の試写会に呼ばれ、SNSで「東條家という立場からも、日米開戦に至る経緯の中で、これほど苦悩する東條英機の姿が描かれたのはおそらく初めてのことだと思います」と評価し、「多くの日本人にぜひ見て頂きたい」と述べています。何故問題になっている飯村穣元総力戦研究所長の関係者である私にはいかなる措置がとられたかがわかるような対応がされないのでしょうか。史実は東條英機とは違い、飯村穣は戦争に反対したことを示しているにもかかわらずです。石井裕也映画監督は何か新しい歴史観を作り出そうとしているのでしょうか。

 さらに、先月のカンヌ映画祭に併設された世界最大規模の映画見本市「フィルム・マーケット」において、本作は英語タイトル「The Secret Battlefield(隠された戦場)」で国際販売を展開しているという衝撃的なニュースを知りました。国内で係争中にこのような行動に出ることは法的には問題がないのかもしれませんが、私の気持ちは深く傷つけられました。

 製作委員会は「原告の祖父は本作に登場せず、当然のことながら同氏の人格や人物像を描く意図もありません」と主張していますが、中心的な争点は、一般視聴者または関係者が劇中人物を飯村穣と同定するかです。以下の通り、多くの要素が製作者の見解に否定的な方向を指し示しています。

  1. 舞台の同一性。総力戦研究所、昭和16年夏、日米戦の机上演習に、近衛内閣への報告という歴史的枠組みが同じであれば、これは単なる架空組織の物語ではありません。

  2. 役職の同一性。その場の責任者や管理職である「所長」に相当する人物を置けば、史実上の所長である飯村穣と結びつくのは自然です。名前を変えても、役職と歴史的場面が一致すれば、同定可能性は大いにあります。

  3. 視聴者の現実の反応。私どもが番組放送直後のSNS投稿を集計・分析したところ、①少なからぬ数の視聴者が番組をフィクションではなく史実として受け取っており、②ドラマの所長の人格を実在の総力戦研究所長(飯村穣)所長の人格として認識しているなどの調査結果が得られています。これらの数字はドラマ製作者の主張通りに一般視聴者が考えていないことを示している。

  4. 虚実混同の危険性。番組、映画に昭和天皇や近衛首相、東條陸相ら実在人物が多く登場しています。これらの人物、また史実(物語)はフィクションなのか、それとも本当なのか、視聴者や観客にとって大変困惑するものだと思われます。

 製作委員会と同様、私どもは憲法に定める「表現の自由」の重要性を充分に認識しており、日本における表現活動に負の影響を与えることを望んでいません。また、関係者の信用や名誉を不当に毀損する意図も全くありません。

 

 今回の問題の本質はそこにはなく、容易に特定される人物を、フィクションだとして仮名にすれば、何の根拠もなく卑劣な人物に描いても良いのかどうかということです。さらに言えば巨大な組織が、司法の力に頼る以外何の手段も持たない一人の市民の権利を奪うことがこの日本で許されていいのかという問題なのです。また、アメリカとの戦争に反対した人物を好戦派として描く映像を制作することが、平和を望む人々の力を削ぐことにならないかという問題でもあります。

 

 「歴史は真実を描いてこそ、未来への力になる」というのが私共の思いです。そして、同じ思いを持つ弁護団、支援して下さる方々とともに、史実を歪曲し、個人の人格を毀損する映画が上映されることがないように闘ってまいります。

飯村 豊

「総力戦研究所2.0」
お問い合わせ

TEL: 090-3401-7507

〒100-0005
東京都千代田区丸の内2-2-1岸本ビルヂング6F 株式会社JET SET GO 内

ご関心のある方は、
お気軽にお問い合わせ下さい。

 

© 2025 by 総力戦研究所2.0  Powered and secured by Wix 

 

bottom of page